広島高等裁判所岡山支部 昭和28年(う)198号 判決
公職選挙法の認める実費の弁償または労務者に対する報酬の支払は出納責任者が所定の手続を践み所定の基準額の範囲内に於て選挙運動に従事する者に対し、その者が選挙運動のために特に支弁した正常な交通費、弁当料、宿泊費及び労務者に対して立替支弁した正常な賃金等を弁償し、または専ら機械的な労務に服する労務者に対しその労務の対価として直接賃金の支払をなすことをいうのであつて、選挙運動そのものに対する報酬を含まないのは勿論のこと、実費の名において実際支弁せられていない金額を弁償しまたは所定の基準額を超えてその支給をなすことは許されないのであるから仮りにその前渡が許されるとしても、前渡の当時その使途がその種目、金額或は支払先等によつて具体的に予定せられ、かつそれが正当な実費または報酬であることが後日領収書その他の資料によつて個々に証明せられるような方法を以つて支給されなければならないものと解する。
ところが本件にあつては、ただ僅かに被告人江見と遠藤が受領した金銭の一部を現実に選挙運動の交通費、弁当料、宿泊費として費消し、またはその一部に相当する労務に服したことを認め得るに止まり記録を精査し諸般の証拠を検討して見ても本件各金銭が当初から前記のような趣旨を以つて合法的な実費または労務報酬として授受せられたものとは到底認められない。